満たされていた心
人がただ食べるという、最小限の生存のために生きていた時代。そこにはまだ言葉も文字もなく、文明の発達は非常にゆるやかでした。
そう聞くと、当時の人々は知恵も向上心もなかったと思われるかもしれません。しかし、決してそんなことはありませんでした。その時代の心は、現代人とは比べ物にならないほど満たされていたのです。
彼らには物質欲、名誉欲、金銭欲といったものは全くなく、人と自分を比べることもありませんでした。土地は地球から与えられたものであり、全ての人々のもの。ここは自分の土地だと主張する者など、誰一人いませんでした。結婚という制度もなく、生まれた子供は集落の皆で愛情を注ぎ、大切に育てていました。
食べ物も、自然の恵みも、天候さえも、すべては天からの采配であり、大いなる御意図の現れであることを、彼らは肌で悟っていました。「波動」という言葉こそ知りませんでしたが、自らが発する思いが自らに返ってくるという宇宙の法則を理解し、常に天と周囲への感謝を忘れずに生活していたのです。
いわゆる霊感や、危険を察知する直感力も、現代人より遥かに優れていました。自分たちが偉大な何かによって生かされていることを理解し、その大いなる存在への祈りを捧げることもありませんでした。ですから、その精神性は、現代人よりもずっと高く、優れていたと言えるでしょう。人は皆、ミナカヌシから等しく生を与えられた、平等な存在だったのです。
文明を拓く「神の文字」
その時代の中に、やがて日本の礎を築く、神の代行者たるクニトコタチが誕生しました。
クニトコタチは、人々の衣食住を整え、その暮らしをより豊かなものにしたいと考えられました。そして、まだ明確な言葉すらなかったその時代に、文明の基礎となる「文字」を考え出されたのです。
それは、宇宙を構成する五つの大元素、ウツホ、カセ、ホ、ミズ、ハニを元にした文字でした。これは単なる記号ではなく、神の言葉を形にした「神の文字」であり、後のひらがなの起源ともなったものです。
クニトコタチがトコヨクニを建国された時には、すでにこの日本最古の文字が使われ、それによって文明の発達は一気に加速することになりました。宇宙の五元素をその内に含む日本の言葉は、神の言葉にも通じる、誇るべき言葉なのです。



